紙チケットから電子チケットへ!~ミラノ地下鉄-最新情報<2024年5月>

2023年4月に新しい制度〔非接触型(タッチ)決済システム〕が導入されてから一年余りが経過したミラノで、ようやく2024年5月7日から新しい電子チケットの発売が開始されました。これまで使用されてきた紙製の切符が移行期間を経て完全に廃止されることになったのです。

実はこのニュース~年明けの1月に発表されていて、その時点では”2月から”のはずだったのですが、予定より3カ月遅れで実施に至るという【イタリアあるある】ですw!エコロジーの観点から、ヨーロッパの他国・他都市でも紙の切符の廃止が加速化していて、実際に首都ローマでは、すでに2年前の夏に導入されているので「やっとミラノもかぁ...」といった感じです。

今回は、この新しく発売が開始されたチャージ式の電子チケットについて詳しくレポートしたいと思います。

2023年の料金改定に伴って新しく導入された非接触型(タッチ)決済についてと、ミラノの公共交通機関について全般に渡って詳しく紹介しているレポートは、コチラを参照して下さい。今回の記事は地下鉄にフォーカスしているので、バスやトラムについては以前の記事をご覧ください。

ミラノの公共交通機関について

チャージ式電子チケット〔RicaricaMi(リカリカミ)〕について

新たに発行されたチケットの名前は〔RicaricaMi(リカリカミ)〕~繰り返しチャージする“リチャージ”を意味するイタリア語<Ricarica>とミラノを表わす二文字表記<MI>を合わせた造語です。また、二重の意味もあって、直訳すると「私にリチャージして!」という意味のユーモアあるネーミングです!

チャージ式の電子カードについては、昨年のレポート記事でも紹介していますが、同じネーミングでも、今回新しく発売された電子チケット/リカリカミは、従来の電子カード〔RICARICAMI〕とは全く別物です。まず、チケット本体は無料(従来のものはカード本体が1.5ユーロ)なので、最初にチケットを購入してそれを使用したら、次からはそこに繰り返しチャージをして使います。チケットの素材もまったく変わっていて、従来のものはクレジットカードのようなプラスチック製で厚みがあったのですが、新しいものは紙をコーティングしているような感じでかなり薄いです。比較のため、下に実際の写真を3種類とも掲載しておきます。

新しい電子チケットには、ミラノのシンボル的なモニュメントのシルエットがデザインして配置されていて、観光客を意識しているのが分かりますよね。(右からスフォルツェスコ城、大聖堂、ガレリア、ユニクレジットタワーを含む高層ビル群、平和の門)

シルエットの上には、イタリア語で<Biglietto ricaricabile(チャージ式チケット)>と、その下に英語でも同じ意味の<Top up ticket>(※写真には筆者が黄色い枠で囲って加工)と書かれているように、やはりツーリスト向けであることが分かります。

紙チケットが使用できるのは2024年11月30日までです!

それまでは移行期間なので、地下鉄の改札機もバスやトラムの刻印機も両方に対応したものが設置されている予定ですが、
徐々に置き替わっていくそうなので、手元に紙チケットを所有している場合は、早めに使いましょう。

I vecchi biglietti si possono usare fino al 30 novembre.

切符の種類と料金

料金体系については、一回券(シングルチケット)は2.2ユーロで、基本的に市内中心部(ゾーン3以内)であれば料金一律で、地下鉄/トラム/バスどれでも、または組合せて利用しても、90分以内乗り放題となっているのは変わりません。つまり、今回の新制度導入では料金は据え置き(三日券のみ値上がり)となっています。

一回券の他の種類は、一日(24時間)券/三日券/回数券(10回分)というのがあり、料金は以下の通りです。

  • 一日券:7.6ユーロ~最初に使用開始した時間から24時間乗り放題
  • 三日券:15.5ユーロ(13から値上がり)~使用開始の日から3日間の連続使用(3日目の終電まで利用可)
  • 回数券:19.5ユーロ~10回分なので約1回分お得!ただし複数人での使用は不可

ちなみに、従来の電子チケットには有効期限があるので、新しいチケットの有効期限について駅の係員に聞いたところ「5年」と言っていましたが、公式サイトのチケットの説明の中には期限についての記載がなく、またチケット上にも明記されていないので確証はありません。また、ICカードのような強度はないので、繰り返し使っているうちに折れたり縒れたりしそうですし、磁気が弱って交換が必要になるかも知れません。基本はツーリストをターゲットにしているので仕方ないでしょう。(在住者は主に定期券を利用するので...)

いずれにしても、使用頻度に応じて、シングルチケットを1回~複数回チャージするか、一日券/三日券/回数券を選んでチャージして利用することになります。一度にチャージできるのは、シングルチケットは公式サイトでは一度に30枚までと謳っていますが、券売機では上限10枚までしか選択できません。でもシングルチケットを10枚買うなら回数券の方がお得ですよね。一日券と三日券についても、最初の購入時であれば一度に10回分まで選択できるようになっていました。回数券に限っては5セットまでです。ただ、一度にまとめてチャージしたチケットを、万が一紛失してしまってもいけないので、滞在日数と使用頻度に合わせて必要な分を購入するのが良いと思います。切符そのものの有効期限は、例えば回数券の場合は、チャージしてから2年間です。出張などで頻繁にミラノへ来る方は、回数券をチャージしておいて残った分はチケットを失くさないように保存しておくというのもありかも知れません。

なお、違う種類のチケットや料金ゾーンの違うチケットを同時に混在させることはできません。例えば、最初に一日券を購入した場合、その一日券を使い終えてから新たに必要な分の一回券を追加でチャージする・・・といった具合に利用することができます。

ミラノ市内のゾーン

ゾーン分けについては、以下の路線図を参照して下さい。観光客やビジネス/イベント等でミラノに来る方が良く利用されるのは、展示会場のあるロー・フィエラ<RHO Fiearamilano>(赤線M1の始終点)や、コンサート会場のあるアッサーゴ・フォーラム<ASSAGO forum>(緑線M2の始終点)、ミラノの空の玄関口リナーテ空港<Linate aeroporto>(青線M4の始終点)、そして、サッカースタジアムのあるサンシーロ<SAN SIRO Stadio>(リラ線M5の始終点)になると思いますが、いずれもゾーン3以内なので、基本のチケット料金で利用可能です。

ミラノの地下鉄路全図(M1-5がメトロ、Sは郊外列車)~2024年5月現在 (※ココをクリックすると最新の路線図が開きます)

地下鉄のチケット購入と利用方法

さて、新しいチケットの導入に伴い、その購入方法と利用方法について注意する点がいくつかあります。まず、地下鉄利用の場合には、駅構内の改札口の近くに自動券売機で切符を購入できますが、まだ旧式の自動券売機を置いたままの駅が多いため、新しいチャージ式のチケットを購入/チャージする場合は、正面上部に大きく〔Top up tickets〕と掲示してある券売機を探して下さい。古い券売機ではまだ紙チケットの購入か、従来の電子チケットのチャージしかできません。

見た目はほぼ同じで、見分けがつかず紛らわしいので、この文字を目安にして下さい(下の写真を参照)。

この券売機での購入方法ですが、最初の初期画面は写真①のような画面なので、ここでオレンジの帯のところ<Inizia/Start>をタッチします。(※前の人が利用した後だと、この初期画面でないこともあります)

すると写真②のような画面となりますが、これはイタリア語なので言語を変えたい場合は右上の国旗マーク<ITA>をタッチすると写真③の画面になります。ここで英語<ENG>を選んで、次の画面でチケットの種類を選択しますが、デフォルトは一回券<90 minutes>と出てきます(写真④)。そこで<Buy 2.20€>と書いてあるオレンジの部分をタッチすると、次の画面に切り替わります(写真⑥)。※比較のために従来の紙チケット購入の画面(写真⑤)もこちらに載せているので違いをご覧ください。

⑥の枚数の選択画面で、1回分のチケットで良ければそのままですが、もし一枚の電子チケットに複数枚のシングルチケットをチャージ(一度に購入)する場合は<+>マークを押すと枚数が増えて金額も変わります。枚数を選択したらオレンジ表示の<Pay now>をタッチすると、写真⑦の支払方法の選択画面になります。クレジットカード払いは上の段<Cards and debit cards>、現金で払う場合は下の段<Cash>をタッチします。

(※大きな金額の紙幣はお釣りがない場合には利用不可ですが、たまに紙幣だけ取られてお釣りが出てこないトラブルもあるので、細かい紙幣やコインがない場合は、クレジットカードで支払う方が無難かも知れません。)

次の画面では「購入レシートを印刷できません、それでもこのまま続けますか?」というメッセージが出ているので、<Yes>を選択して支払いに進んで下さい(なぜこのメッセージが出てくるのかは謎です…たまたまレシートの紙が不足していたのかも知れません)。

ちなみに、従来の紙製チケットの場合は、ここでシングルチケットを複数枚で選択すると、その枚数分だけチケットが出てきますが、電子チケットはあくまで一枚のカードに何枚分をチャージするかという選択なので、混同しないようにして下さい!

また、もし初めから一日券<24 hour>や三日券<3 days>を購入したい場合は、④の画面で<Buy>の下にある<Tickets and carnets>をタッチすると、写真⑨の画面に切り替わります。もし回数券<Carnet 10 tickets>を選択したい場合は、この画面で右側の矢印【>】をタッチすると選択肢が出てきます。

なお、2回目以降の利用で電子チケットに次の利用分の切符をチャージする場合は、④の画面の右側の電子チケットのデザインの下にあるオレンジの部分<Top-up a ticket>をタッチして先に進み、スクリーンの下に<INSERT TRAVEL CARD OR TOP UP TICKET>と書いてあるスロットがあるので、そこに電子チケットを挿入してからチャージする種類と枚数を選択します。

また、券売機が並んでいたり調整中で使用不可や故障中の場合には、改札付近にある新聞や雑誌を売っているキオスク<Edicola>があれば、そこで購入やチャージをすることも可能ですし、駅に行く前に街中のタバコ屋さんで販売しているところもあります。

改札機も電子チケット用に移行中

電子チケットを入手したら改札口を通りますが、実はここでも注意が必要です!前述のように紙製の切符は今も(11月30日まで)利用できるので、各駅の改札機はまだ従来型の旧式ものと混在しています。つまり、新しい電子チケットで通れる改札口は限定されています。具体的には下の写真を参考にして下さい。従来の改札機はもちろんNGですが、一年前に設置されたタッチ決済に対応しているタイプでも電車チケットには対応していません。見た目がとても似ているので間違えやすいですが、駅によっては3枚目の写真のように床にアイコン表示をしているところもあります。

もう少し拡大表示で説明したのが下の写真です。電子チケットは矢印⇨で示した辺りをタッチします。クレジットカード等のタッチ決済も同様です。(従来の紙の切符を利用する場合は、<Biglietto/Ticket>と書いてある黄色い丸の差込口に切符を挿入します。)

※降車駅で改札を出る際にも同様に、電子チケット対応の改札機を探してタッチして外に出ます。(タッチ決済利用の場合も必ず改札を出る時にタッチが必要ですし、紙の切符の場合も挿入しないと出られません。)

電子チケットに対応している新しい改札機(拡大写真)

ちなみに、回数券を購入した場合は、チケットをタッチすると上の青い窓の所に残数が表示されます。

なお、スマートフォンにATMのアプリをダウンロードして、そこにクレジットカードを紐づけて利用する方法もあります。QRと書いた右隣の窓枠は、そのアプリで購入した切符のQRコードを読込ませる部分(リーダー)です。

電子チケットの導入で便利になったこと不便になったこと

今回の新しい電子チケット導入の一番の目的は、何といっても紙資源の無駄遣いを失くして環境に優しいエコロジー対策になっていることでしょう。

また、利用する側の観点でも、チケット複数枚を持ち歩かずに一枚で済むという便利さがあります。これまで旅行者も、あらかじめ必要な枚数を購入したのはいいのですが、使用した切符と未使用の切符が混在して紛らわしかったりしたこともあったと思います。

一方で不便になったこともあります。これまでの紙製の切符は、改札機に挿入した際に裏側に日時が刻印されていました。一回券の切符は利用開始時間から90分間有効なので、時間内であれば一枚の切符で往復もできますし、地下鉄の後に続けてバスやトラムなどに乗ることもできます。ところが、電子チケットの場合は改札でタッチをして入るため、時間が刻印されません。そのため、自分で使用開始の時間を記憶していないとならないのです。

もし移動中に90分を経過してしまっている場合は、無効な切符で乗車していることになり、電子チケットに予備の切符がチャージされていない場合は、出口でブロックされてしまいます。その場合は、改札内にチャージする機械があるはずなので、新たに購入して下さい。

一日券についても、有効なのは使用開始から24時間となっているので、最初に利用した時点で時間をどこかにメモしておくと良いでしょう。

PS:現在は券売機も改札機もすべてが移行期間なので、これが徐々に変わっていくことになりますが、特に券売機に関しては、ローマのように言語選択で〔日本語〕が選べるようになると良いなぁと個人的には思います。

ATMのアプリケーション

最後に、ミラノ市内を公共の交通機関を活用して移動しようと思っている方に便利なアプリをご紹介します。改札機の説明のところでも少し触れましたが、ATMが運営している公式のアプリがあります。

下のロゴマークよりATMの公式サイトに進んで、スマートフォン用のアプリをインストールしておくと、各路線の情報やストライキの情報などをリアルタイムで確認できます。英語にも対応しているので、よろしかったら参考にして下さい。

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投稿者プロフィール

舞緒 ルイ
舞緒 ルイ
2011年よりイタリア・ミラノ在住。
渡航前は旅行代理店に勤務し、ヨーロッパ専門のツアーコンダクター
として、ヨーロッパ各地を周った経験から、2016年にルイジーロを
立ち上げて現在に至る。