ミラノの公共交通機関について

2023年に一律の料金値上げがあったミラノ市内の公共交通機関〔地下鉄/バス/トラム(路面電車)等〕ですが、これまでは事前に定期券や切符または回数券を所有していないと乗車できなかったバスやトラムにも、2023年4月から新しい制度が導入されました。日本と違ってミラノのバスやトラムでは、運転手に直に運賃支払いができないシステムなのですが、最近ようやくクレジットカードやスマートフォンでの非接触型(タッチ)決済〔Pagamento Contactless 〕が可能となりました。

今回は、このあたりのことを含め、ミラノの公共交通機関の利用方法などを詳しくレポートしたいと思います。

ミラノでATMと言えば?

旅先で見かける表記で一瞬「ん?」となるものってありますよね。例えば〔M〕のマーク。。。昔はよく冗談で「Mac Donald(マクドナルド)ではないですよ~w」なんて案内したりしたものですが、イタリアで地下鉄が走っている都市(ミラノ、ローマ、ナポリなど)で、このMが表わすのは、Metropolitana(メトロポリターナ)=地下鉄という意味のイタリア語の頭文字です。

同様に、<ATM>と聞いてすぐに思い浮かぶのは、おそらく銀行などでお金を出し入れする機械だと思うのですが、ここミラノでATMと言ったら・・・ミラノ市内の公共交通機関を管轄している会社がAzienda Trasporti Milanesi(アズィエンダ・トラスポルティ・ミラネージ)なのですが、その頭文字を取ってATM(アー・ティー・エッメ)となります。

ミラノの地下鉄路全図(M1-5がメトロ、Sは郊外列車)~2023年5月現在 (※ココをクリックすると最新の路線図が開きます)

ミラノの地下鉄は、M1=1号線〔赤〕/M2=2号線〔緑〕/M3=3号線〔黄〕の以前からあった3路線に加えて、10年前に開業したM5=5号線〔リラ〕と、昨年ようやく(遅れに遅れて)開業したM4=4号線〔青〕の5路線があります。その中で、M4は現在も工事中(上の路線図で点線となっている区間)で、リナーテ空港からの6駅しか開通していませんが、近々には中心部まで延長され、年内には最終目的駅まで繋がる予定となっています。(その後さらに2駅延長され、中心部のSAN BABILA駅まで開通していますが、2023年中に全線開通とはなっていません)

東京などに比べると、地下鉄網がそれほど便利ではないのですが、それを補うように市バスや市電(路面電車=トラム)が網羅されているので、市内の移動で困ることはほぼありません。

料金の推移と切符の種類

日本でも昨今は様々な値上げが相次いでいる中、東京の交通機関も2023年の3月に値上げしたというニュースを耳にしました。そして、私が日本に一時帰国している間に、ここミラノの公共交通機関も(2023年1月9日から)値上げになっていたのです!

日本滞在中は、あまりイタリアのニュースを見聞きしていなかったので、こちらに戻ってから慌てて古い切符の処理をしました。

基本的に市内(ゾーン3以内)であれば料金は一律で、地下鉄/トラム/バスどれでも、または組合せて利用しても、90分以内乗り放題となっています。今回の値上げでは、シングルチケット(一回券)が2ユーロから2.20ユーロに20セント上がりました。私がミラノに移住した頃(2011年)の料金はまだ1ユーロだったのですが、これが2013年9月に1.5ユーロとなり、2019年7月に2ユーロ...と、6年の間に2倍になってきていました!

参考までに、今回の東京メトロの値上げは、なんと28年ぶりに10円だけ上がったというのを聞いて、このミラノの交通費の上げ幅率がすごいものだと改めて感じた次第です(泣)

紙チケットの一回券

さて、一回券の他にどのような種類があるかというと、一日券/三日券/回数券というのがあります。せっかくなので、こちらの料金もご紹介しておきますね。

  • 一日券:7.6ユーロ(旧料金7ユーロ)~最初に刻印してから24時間乗り放題
  • 三日券:13ユーロ(旧料金12ユーロ)~使用開始の日から3日間の連続使用
  • 回数券:19.5ユーロ(旧料金18ユーロ)~10回分なので約1回分お得、ただし複数人での使用は不可

ミラノ版パスモ/スイカ〔RicaricaMI〕について

日本では、交通系ICカード(東京ならPasmo/Suica等)がメインで使われるようになって久しいですが、その点イタリアはだいぶ遅れを取っているように思います。

普段あまり公共交通機関を利用することがない私自身、ついこの間までは紙の切符を使っていました。上述しているように、以前はミラノのバスやトラムはあらかじめ切符を持っていないと利用できなかったので、回数券または常に複数枚のシングルチケットをお財布に入れておく必要がありましたが、いかんせん紙製なので時間とともに縒れたり折れたり汚れたり...ということがありました。

ですが、今回の料金改定をきっかけに、チャージ式のカードに切り替え、古い未使用分の切符についても差額を支払って、このカードにチャージしてもらうことができました。そのチャージ可能なプラスチックのカードが下の写真です!

プラスチック製のチャージ式カード〔RICARICAMI〕

その名も〔RicaricaMI(リカリカミ)〕といい、繰り返しチャージする“リチャージ”を意味するイタリア語<Ricarica>とミラノを表わす二文字表記<MI>を合わせた造語です。また、二重の意味もあって、直訳すると「私にリチャージして!」となるユーモアあるネーミングなのです(笑) これ実は、10年ほど前から存在していたようです。

このカードの実費は1.5ユーロで、有効期限(3-4年)内であれば繰り返し利用できます。そこに使用頻度に応じて、シングルチケットを1回~複数回チャージするか、一日券/三日券/回数券を選んでチャージして利用することもできます。切符そのものの有効期限は、例えば回数券の場合は、チャージしてから2年間です。違う種類のチケットを同時に混在させることも可能なようですが、その場合に何から優先されるのかなど細かいことは公式サイトにも記載されていず不明です。

実際に使い始めてみて、在住者には便利なものだと実感しています。定期券と違って、無記名式で写真も不要なので簡単に入手できますが、カード代金がかかることやチャージの手間を考えると、旅行者の方には使い切りの紙チケットの方が使いやすいかも知れませんね。

地下鉄のチケット購入と利用方法

では、実際にどんな所で切符が買えるか、どうやって購入したら良いのかについて解説します。まずは地下鉄利用の場合には、前述のMのマークを見つけたら、地下鉄駅の入口があるので、階段またはエスカレーター/エレベーターで降りていきます。そうすると改札口の近くに自動券売機があるので、そちらで切符を購入できます。

地下鉄駅に設置されている自動券売機

こちらは比較的に新しいモデルの券売機なので、画面をタッチして進めるタイプです(旧式だとボタンを押すタイプもあります)。最初のスクリーンをタッチすると、まず言語を選ぶ画面が出てきます。ご覧のように5カ国語が出てきますが、ここでは英語<ENGLISH>を選んでいます。次の画面でチケットの種類を選択:一回券は左上の<Ordinary 3 zones>で、一日券なら右上の<Daily 3 zones>、回数券なら右側2段目の<Book of 10 tickets>になります。画面上で切符の種類をタッチすると、次の画面に切り替わります。一回券を選んだので、金額が€2,20と青字で表示されています。もしここで複数枚を一度に購入したい場合は、金額の下の<+>マークを押すと枚数が増やせて、金額も変わります。枚数を選んだら、緑色の<Continue>を押します。すると、支払方法を選ぶ画面となりますので、現金<Cash>かカード<Card>を選んで決済して下さい。

なお、券売機が並んでいたり、調整中で使用不可や故障中の場合には、改札付近にあるキオスクのような売店で切符を購入することも可能です。その場合には、チケットの種類の単語であれば大抵は英語も通じますが、せっかくなのでイタリア語でトライしてみてはいかがでしょうか?

切符を1枚なら:「Un biglietto, per favore(ウン ビリエット, ペル ファヴォーレ)

切符を2枚なら:「Due biglietti, per favore(ドゥエ ビリエッティ, ペル ファヴォーレ)」

一日券なら:「Un biglietto giornaliero, per favore(ウン ビリエット ジョルナリエーロ, ペル ファヴォーレ)」

といった具合です。

地下鉄の改札付近にあるキオスク

切符を入手したら、改札口を通ります。なお、最近ではチケットレス化が進んでいて、駅の改札機も徐々に新しいものに切り替わっていて、駅によってはまだ旧式の改札機もあります。

地下鉄の改札機-左が旧式で右側がタッチ決済が可能なタイプ

紙の切符の場合は、<Biglietto/Ticket>と書いてある黄色い丸の差込口に切符を挿入すると、バーのロックが解除されて中に入れます。この時に必ずチケットを回収するのを忘れずに、そして失くさないように気をつけて下さい。降車駅で改札を出る際にも切符がないと出られないからです。

そして、この切符は利用開始時間から90分間(改札機に挿入した際に切符の裏に日時が刻印される)は有効なので、例えば、行った先で用事を済ませて時間内であれば同じ切符で往復もできますし、地下鉄の後に続けてバスやトラムなどに乗る場合も有効です。

ちなみに、<Tessere ATM/ATM cards>と書いてある部分は、前述のチャージ式カードや定期券をタッチするところです。さらに、右側の新式改札機の方には、右上の部分に<CARTE BANCARIE/BANK CARDS...CONTACTLESS>と書いてある箇所があります。こちらは、冒頭で案内をしたクレジットカード等での非接触型決済をタッチするところです。銀行のキャッシュカード/バンコマットや主要なクレジットカード(VISA, Master等)が使えるようになっています。なお、別の方法として、スマートフォンにATMのアプリをダウンロードして、そこにクレジットカードを紐づけて利用する方法もあります。その場合に購入した切符はQRコードが表示されるので、そちらを読込ませる部分(リーダー)が左下の青いところです。

バスやトラムの利用方法

さて繰り返しますが、ミラノの公共のバスやトラムでは、運転手に直に運賃を払うことも切符を買うこともできません。なので、滞在先の最寄りに地下鉄駅があれば、そこで切符を買ってから利用することができますが、駅が近くになかった場合で、最初からバスやトラムを利用したい時はどうしたら良いでしょう?

その場合は、バスやトラムの停留所の近くにあるタバコ店を探して下さい。イタリアではバル<Bar>と併設しているところが多いのですが、タバコの他に文具/小物やガム/飴などのお菓子を売っていたり、宝くじや切手/印紙などを売っているお店です。(ただし、どこのタバコ店でもATMの切符を扱っている訳ではありません。)

タバコ店はイタリア語で<TABACCHERIA(タバッケリア)>といい、目印は写真のような〔T〕のマークの看板です。ここにはタバコを意味する<TABACCHI(タバッキ)>と表示されています。ついでなので、「タバコ店はどこにありますか?」という簡単なイタリア語を書いておきますね。

「Dov'è la tabaccheria?(ドヴェ ラ タバッケリア?)」

この場合、尋ねた人からもイタリア語で返ってきますが、イタリア人は身振りを交えないと話せない国民なので(笑)、きっとタバコ店の方向を大きなジェスチャーで教えてくれることでしょう! 切符を求める時のイタリア語は、上述のキオスク/売店と同じです。

街中のタバコ屋の甲板

さあ、無事にチケットを入手したら、目的地へ向かう路線のバスやトラムに乗車してみましょう。一車両タイプのバスやトラムの場合は、前方と後方の2ヵ所に下の写真のような機械が設置されています。連結式のバスやトラムの場合は、これが中央部にもあります。

バスやトラムの刻印機-左が旧式で右側がタッチ決済が可能なタイプ

右側の最新モデルの機械の方はカード専用となっていて、紙の切符の場合は左のタイプの機械でしか刻印ができません。乗車したら直ぐに、こちらの機械を探して、<Biglietto qui/Ticket here>と書いてある黄色い丸の差込口に切符を挿入して刻印してください。

~ここで注意したいのは、ただ切符を所持しているだけでは無効<NG>だということです!~

運転手に運賃を支払わないと乗車や降車ができないシステムの乗り物と違って、切符への刻印はあくまで利用者に委ねられています。つまり、しようと思えば無賃乗車をすることもできてしまう訳で、中にはそういう輩もいるのです。そのため、バスやトラムの場合は、不定期に抜き打ちで係員が複数名で乗車してきて(前と後ろから挟み撃ち)、有効な切符や定期券を保持しているかのコントロール(検札)を行なっています。

そして、無賃乗車が見つかると、強制的に次の停留所で降ろされて、罰金を科されます。切符を持っていても、未使用の場合や有効時間を過ぎている場合も同様です。

もう一点だけ気を付けたいのは、この刻印するための機械が壊れていたり、カードは使えるけれど紙の切符は使用できないことがたまにあるということです。後者の場合は、機械の緑色の画面に<SOLO TESSERA>(カードのみ)とデジタル表示がされています。こういう時にタイミング悪くコントロールに遭遇した場合は、機械が使えなかったせいなのでそれを主張するしかありません。

ちなみに、一日券や三日券の場合は、最初の乗車時に刻印をしておけば、その度に機械を通す必要はありませんが、地下鉄を利用する場合は、その度に改札機に切符を入れないと通れません。

新システム〔タッチ決済〕の導入で便利になったこと

ここまで長々と説明をしてきましたが、旅先での公共交通機関の利用については、その国/都市のシステムを知っていないと、不便だったりトラブルの元となりますよね。ですが、今回から導入された新システムによって、この点も少し利便性が向上したのではないでしょうか。

まず、タッチ決済が可能なクレジットカードを所有していれば、いちいち切符を購入しなくても、乗車ができるようになりました。これは在住者にとっても助かることがあって、定期券や切符を持っていない時にバスやトラムを急に利用したいけれど、近くに地下鉄やタバコ店がないという状況になった時です。もちろん、タッチ決済に対応しているカードを持っていない場合は話になりませんが、キャッシュレス化が遅れ気味のイタリアでも、最近はかなり非接触式の決済方法が普及し始めている印象です。

ただ、残念ながらイタリアの地下鉄やバス/トラム内などは、決して治安が良いとは言えないので、クレジットカードを盗られてしまったり、うっかり失くしたり落としたりしてはいけませんよね。その点にも注意しつつ便の良い方法で利用しましょう。

ATMのアプリケーション

最後に、ミラノ市内を公共の交通機関を活用して移動しようと思っている方に便利なアプリをご紹介します。切符の購入のところでも少し触れましたが、ATMが運営している公式のアプリがあります。

下のロゴマークよりATMの公式サイトに進んで、スマートフォン用のアプリをインストールしておくと、各路線の情報(移動経路や停留所での待ち時間など)をリアルタイムで見ることができます。英語にも対応しているので、よろしかったら参考にして下さい。

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投稿者プロフィール

舞緒 ルイ
舞緒 ルイ
2011年よりイタリア・ミラノ在住。
渡航前は旅行代理店に勤務し、ヨーロッパ専門のツアーコンダクター
として、ヨーロッパ各地を周った経験から、2016年にルイジーロを
立ち上げて現在に至る。