イタリアの穴場観光地『パドヴァ』

前回の投稿では、イタリアの温泉リゾート『アーバノ・テルメ』での滞在レポートをご紹介させて頂きました。アーバノ・テルメにアクセスするには、車でも電車でも最寄りのメジャーな都市であるパドヴァを経由(約12km/30分弱)することになります。今回も、少し時間があったので、実際にアーバノに行く時にちょこっと立ち寄ってきました。そんな見どころ満載の観光地『パドヴァ』についてレポートします。

パドヴァについて

ヴェネツィアのお隣にあり、ヴェネト州の中心に位置しているパドヴァは、古くから文化と経済の中心地であり、交通の要所としても栄えてきました。紀元前9世紀頃にはすでに町としての機能を有していて、ローマ帝国時代には重要な拠点となっていました。12~14世紀にかけてが町が最も栄えた時代で、パドヴァ大学やラジョーネ宮など、現在も見ることができる素晴らしい建造物は、この時代に多く建てられています。商業や学業の街として非常に活気があり、風情ある旧市街や巡礼地となっている聖堂など、非常に見どころの多いイタリアの❝穴場観光地❞ともいえる町です。

パドヴァと近隣都市の位置関係

スクロヴェーニ礼拝堂と世界遺産のフレスコ群

この町を世界に広く知らしめたことの一つは、地元の富裕な高利貸しであったエンリコ・スクロヴェーニによって14世紀初頭に建てられた『スクロヴェーニ礼拝堂(Cappella degli Scrovegni)』の存在でしょう。内部はフィレンツェ出身のイタリア人画家で、❝イタリア絵画の父❞、❝ルネッサンス絵画の先駆者❞と呼ばれるジョットと、その弟子が描いた素晴らしいフレスコ画に覆われていて必見です。

ジョットの作品は、イタリア各地の美術館や教会にも残されていますが、日本人の間でも有名なアッシジのサン・フランチェスコ聖堂内の壁画と並んで、最高傑作との呼び声が高いのが、このスクロヴェーニ礼拝堂の壁画なのです。❝ジョット・ブルー❞と呼ばれる鮮やかな青色を天井や背景に用い、聖母マリアとキリストの生涯の物語を描いたフレスコ画の連作は美術史に残る傑作と言われています。

外観はシンプルなスクロヴェーニ礼拝堂<2016年11月・筆者撮影>

このスクロヴェーニ礼拝堂は完全事前予約制となっていて、内部見学は一回に25人まで(コロナ禍はさらに少ない人数制限だった)が15分毎に総入替制となっています。見学前に別室で15分ほどのビデオ鑑賞があったり、予約時間の45分前までにチケットを引き換えなければならなかったりするので、時間に余裕を持ってスケジュールを組む必要があります。また、共通のチケットで隣接の美術館が見学できる関係で、美術館が閉館の月曜日はチケットの料金が異なったり、一部の期間は夜間の見学を設けていたりするので、詳細は公式サイト(英語/イタリア語)を参照して下さい。

スクロヴェーニ礼拝堂
住所: Piazza Eremitani 8, 35121 Padova
電話: +39-049-201-0020

公式サイト http://www.cappelladegliscrovegni.it/index.php/en/la-cappella-di-giotto (英語)

公式チケット予約サイト☜ (英語)

実は、ここはつい最近(2021年7月)になってユネスコの世界遺産に登録されたばかりです。逆に、今まで世界遺産に認定されていなかったことの方が不思議なくらいなんです! ちなみに、この時に一緒に世界遺産に認定されたのが、ヨーロッパの大温泉保養都市群のひとつとして、トスカーナ州にある温泉保養地『モンテカティーニ・テルメ』です。

ただし、スクロヴェーニ礼拝堂が単体で世界遺産になったのではなく、『14世紀のフレスコ画作品群』の一つとしてエントリーされています。詳細は、以下を参照して下さい。

世界遺産:14世紀パドヴァのフレスコ画(登録年2021)

14世紀パドヴァで描かれた統一主題の一連のフレスコ絵画群が世界遺産に登録されました。
この登録はパドヴァの城壁内にある8つの宗教的・世俗的建物から構成されています。
1302年から1397年の間にさまざまな依頼主により、さまざまな芸術家によって異なる用途の建物の内部に描かれた一連のフレスコ画であるにもかかわらず、それぞれのフレスコ画は様式と内容に統一性をみせているのです。 
壁画の歴史に革命的発展の始まりを示したとされるジョットが描いたスクロヴェニ礼拝堂の一連のフレスコ画をはじめとして、グアリエント・ディ・アルポ、ジュスト・デ・メナブオイ、アルティキエーロ・ダ・ゼビオ、ヤコポ・アヴァンツィ、ヤコポ・ダ・ヴェローナといった芸術家の作品が含まれています。
彼らが描いた一連の作品は、1世紀の間に、フレスコ画芸術がいかに新しい創造的推進力と空間表現の新解釈に沿って発展してきたかを示しています。

イタリア政府観光局のサイトより

作品が残る8つの場所は次のとおりです。

  1. スクロヴェーニ礼拝堂(Cappella degli Scrovegni)
  2. エレミターニ教会(Chiesa degli Eremitani)
  3. ラジョーネ宮(Palazzo della Ragione)
  4. サンタントニオ大聖堂と修道院(Basilica e Convento di Sant’Antonio)
  5. 大聖堂の洗礼堂(Battistero della Cattedrale)
  6. カラレーゼ宮の礼拝堂(Cappella della Reggia Carrarese)
  7. サン・ジョルジョ礼拝堂(Oratorio di San Giorgio)
  8. サン・ミケーレ礼拝堂(Oratorio di San Michele)

位置関係を大まかにいうと、1,2は鉄道駅からすぐ近くにあり、駅から一番離れている4,7でも2キロ程なので徒歩でも30分弱ですし、トラムで移動することもできます。それ以外は8を除いてすべて旧市街の中心地にまとまっていますし、8も含めてざっくりと1キロ前後の移動距離なので、半日もあればすべて徒歩で周遊することも可能です。ただし、場所によっては開館時間が限られていたり、昼休憩があるところも多いので、事前によく調べて効率よくプランを組む必要があります。

【参考までに…】あまり知られていませんが、パドヴァには、もう一つユネスコの世界遺産が存在します。それは、1545年に造園された世界初でヨーロッパ最古の『オルト・ボタニコ植物園』(登録1997年)です。もともとはパドヴァ大学の付属施設として、薬学研究のために作られた植物園で、それまでの薬草医学の間違った認識などを改め、薬学の飛躍的な進歩にも貢献したといわれています。また、当時は海洋貿易で栄えていたヴェネツィアの領土だったことから、国外からの珍しい植物も多く持ち込まれたという特性もあったようです。

サンタントニオ大聖堂

建築物としても興味深いサンタントニオ聖堂<2016年11月・筆者撮影>

次にご紹介するのは、パドヴァの守護聖人である聖アントニオ(1195年ポルトガル・リスボン生、1231年パドバ没)が祀られているサンタントニオ聖堂です。

年間を通して、イタリアだけでなくヨーロッパ各地から熱心な信者が礼拝に訪れ、さらには世界中から巡礼者が訪ねてくるイタリアでも有数の聖地の一つです。

聖堂は、フランチェスコ修道会の僧だったアントニオが亡くなった翌年から建築が始まり、16世紀に完成しました。外観はその時代、この地がヴェネツィア共和国であった背景を受け、オリエンタルなムードの漂う8つのクーポラ(丸い屋根)が特徴的な外観となっています。

内部には、聖アントニオの遺物とお墓が奉納され、上述のように世界遺産にもなっているフレスコ画や、芸術的な彫刻などが美しく、全体的に豪華絢爛な装飾が施されていて、聖アントニオがどれほどの人物だったのかが良くわかります。

また、上の写真にも見られる聖堂の手前の騎馬像は、ルネサンスの彫刻家ドナテッロの傑作『ガッタメラータ騎馬像』で、聖堂内には主祭壇にもドナテッロ作のブロンズ像が飾られています。

【ご案内】今回の訪問で撮影したサンタントニオ聖堂の写真をインスタグラムでご紹介しています~ぜひ以下のアイコンよりご覧ください!

<ルイジーロ公式インスタグラム>

まとめ

今回ご紹介させて頂いたパドヴァ~いかがでしたか?もし、まだパドヴァを訪れたことがない方は、前回レポートさせて頂いたアーバノ・テルメに宿泊しつつ、日帰りでパドヴァ観光に訪れることも可能ですし、ヴェネツィアから日帰りすることも可能です。

イタリア旅行の目的や時期・日数に合わせて、様々なプランをご提案させて頂けますので、どうぞルイジーロまでお気軽にお問合せ下さい!

投稿者プロフィール

舞緒 ルイ
舞緒 ルイ
2011年よりイタリア・ミラノ在住。
渡航前は旅行代理店に勤務し、ヨーロッパ専門のツアーコンダクター
として、ヨーロッパ各地を周った経験から、2016年にルイジーロを
立ち上げて現在に至る。