• 舞緒ルイ

イタリア国内でもグリーンパス義務化

更新日:8月13日

7月1日から『欧州グリーンパス』(EU Green Pass)、いわゆる『ワクチン・パスポート』の本格的な運用が開始され、間もなく1ヶ月が経ちます。

最初の数日は、パスの読み取りに時間がかかるなど、空港での混乱が取り上げられていましたが、今はスムーズにいっているようです。

正式名称は、『EUデジタルCOVID証明書』(EU digital COVID certificate)というもので、ヨーロッパ連合加盟国間の自由な移動を促進し、仕事や観光目的の旅行を可能にする目的で導入されたデジタル認証です。


証明書の取得要件と有効期限は以下の通りです。

①COVID-19のワクチン(ファイザー/モデルナ/アストラゼネカ /J&Jの4種)接種済み<接種完了から9ヶ月間>

②PCR検査または抗原検査の結果が陰性である<検査から48時間>

③新型コロナウィルスに感染して回復した<治癒から6ヶ月間>

これら3つの状況のいずれかにあることを証明するものです。


有効な証明書の所持者は、EU加盟国間を旅行することができ、旅行先での隔離免除などが受けられます。


また、イタリア国内では、通称『グリーンパス』(Green Pass)と呼ばれ、公的な催事に参加するだけでなく、結婚式への参列やケアハウス(老人ホーム)に住む家族を訪ねたり、スポーツ観戦や観劇などの私的なイベントにもパスの所持が必要とされていました。



<グリーンパスの入手方法>

入手の方法はシンプルで、例えば、ワクチン接種を完了して14日間が経過すると、自動的にSMSでアクセスコードが送られてくるので、それを政府運営の公式サイト、あるいはスマホアプリなどを利用してオンラインで取得できます。

スマートフォンやパソコンを所持していない高齢者などは、かかりつけ医や薬局を通じて取得することもできるようになっています。


私もすぐにアプリをダウンロードして、QRコードがあるデジタル版のグリーンパスを取得しましたが、念のため紙バージョンのPDFも公式サイトから取得して保存してあります。こちらは、紙に印刷して四つ折りにして持ち運べるようになっているのですが、もちろんQRコードを含んでいます。以下にサンプルをご紹介します。

EUデジタルCOVID証明書の紙バージョンのサンプル <伊政府グリーンパス専用サイトより>

左下の図例に倣って四つ折りにした場合、左上が表紙となり、右上が裏表紙となります。QRコードの下には、氏名、生年月日、識別コードが記載されていますが、QRコードをシステムにアクセスさせると、ワクチンの接種や感染からの回復状況、検査結果などが確認できる仕組みとなっています。

また、右下(四つ折りすると中面)には、ワクチン接種の場合には、その種類やメーカー、製造番号や接種日などの詳細が記載されています。


ちなみに、7月25日現在、すでにEUの人口の6割を超す2億8千万件の証明書が発行されたというニュースを目にしました。



<イタリアはフランスを真似た?>

お隣のフランスでは、通称『衛生(ヘルス)パス』(Pass Sanitaire)と呼ばれています。フランスでは6月下旬に1日の感染者数が2千人を下回った後、再び増加に転じて、7月16日に1万人を超えてからは更に加速し、このところの新規感染者数は1日当たり2万人台になり、南仏などの一部地域では、屋外でもマスク着用義務を復活させました。


7月12日にマクロン大統領が、医療従事者のワクチン接種の義務化と衛生パスの条件厳格化などの『追い詰め策』を発表した後、ワクチンの接種予約が急増したそうです。

仏政府は19日、「我々は感染の第4波に入った」と強調し、1日の感染者数が5万人を超えた英国のように爆発的に広がる懸念も示唆しました。


フランスのパスは、これまで千人以上のイベントにのみ提示が求められていたのですが、7月21日からは、50人以上のイベント、あらゆる文化施設、娯楽施設入場の際に、提示(12歳以上が対象)が求められることになりました。

さらに8月からは、レストラン・カフェなどの飲食店に加え、電車・バス(長距離)、飛行機へのアクセスにも、このヘルスパスの提示が必要になります。また、飲食店では屋外・屋内に関わらず同じ条件ということで、飲食店の従業員に対しても、このヘルスパス取得は必須になるようです。


このニュースを聞いていて、いずれイタリアでも同じような動きになると言われていたのですが、噂通り、イタリア政府は7月22日に記者会見をして、8月6日からレストラン・カフェなどの飲食店(屋内のみ)や美術館、映画館、スポーツジム等の施設や、見本市、イベントやテーマパーク等の利用時に『グリーンパス』の提示(12歳以上が対象)を義務付けることを発表しました。追って、公共交通機関(バス、メトロ、列車、飛行機)の利用でも提示が義務化される見通しです。


規定に違反した場合、事業者に加えて利用者にも罰金(400~1,000ユーロ)が課されることとなる他、3日間に3回の違反があった店舗は営業停止になるなど、厳しいルール設定です。

ここ数か月は、ロックダウンが解除され外出禁止などを取り締まっていた警察官が街から姿を消していましたが、このグリーンパスのコントロールのために、また取り締まりの警察官が街に戻ってくることになるわけです。


ドラギ首相は会見で、「デルタ株は脅威だ」と強調し、周辺国(英国、フランス、スペイン)での急速な感染拡大に言及して「迅速に行動しなければ、イタリアでも同じことが繰り返される」などと訴えました。現状、12歳以上の人口の半数以上のワクチン接種が済んでいるものの、若年層の接種は思ったように伸びていないため、首相は「すべてのイタリア人にワクチンを接種してほしい」と呼びかけ、接種スピードをさらに速める必要があるとの認識を示しました。

そして、7月末までだった『非常事態宣言』は12月末まで延長され、保留されていたナイトクラブの再開も見送られました。


なお、現在はイタリア全土がホワイトとなっているゾーン分けですが、このまま感染状況が悪化していくと、今後またイエロー、オレンジ、レッドゾーンに色分けされる可能性もあり、これまでの発生率に基づく基準に加え、新型コロナウイルス患者による病床占有率、集中治療室占有率も考慮されることになりました。


経済を止めずに感染を防ぐには、首相がいうように”ワクチン接種を拡大していく”ことしか手段はないのですが、あえて『ワクチンパスポート』という言葉を使わず、『グリーンパス』という呼称で、ワクチンを接種しなくても旅行などへ行かれる方法も含めて使っていたのかも知れません。でも、<グリーンパスの義務化>によって、これまでワクチン接種を回避したり先送りにしていた人も、実質ワクチンを接種せざるを得ない状況になったのです。(さもなければ、48時間ごとにPCR検査を受けなくてはならないので・・・)


イタリアでもフランスと同じように、ドラギ首相の記者会見後にワクチン接種の予約が増加しているそうです。

それでも、レストランの経営者などは、「せっかく屋内での飲食も可能となって顧客が戻ってきていたのに、この法案で、また客離れが起こる」と懸念しています。



<全国で抗議デモ活動>

一方、ワクチン反対派の抗議デモ活動も活発になっています。先週土曜日(24日)、SNSなどの呼びかけもあり、イタリア全土80以上の都市で一斉に街頭抗議デモが行われました。主な都市の参加人数は、ミラノで9千人、トリノで5千人、ローマで3千人とニュースで発表されていました。


著しい自由の制限だとして、法案化に反対するデモ行進に参加する人が掲げるプラカードや参加者の声の多くは、「No Green Pass」(グリーンパス反対)とか「Libertà」(自由)でしたが、他にも「大手製薬会社は出ていけ!」とか「ワクチンという名の実験~我々はモルモットじゃない!」といったものもあったり、また、グリーンパスの義務化をナチス政権下のユダヤ人迫害に擬えて、ドラギ首相の顔をヒトラーに似せた絵のパネルもありました。


以下、実際の各都市のイメージ写真をネットニュースの画像でご覧ください。


この抗議デモ活動は、もちろんお隣のフランス各地でも起きていて、当局の発表では、マクロン大統領のテレビ演説(12日)直後の7月14日(祝日)の革命記念日には、全国で健康パスに反対する抗議デモが起き、約1万7000人が参加したそうです。その週末17日の参加者は11万4000人に上り、そして先週末24日はさらに増加し、計16万人以上が路上デモを行ったそうです。


もともと、イタリアよりもフランスの方が、様々なデモ活動が盛んに行われてきた背景があり、ワクチン接種に関してもフランス人の方が懐疑的だったという統計もあって、実際にデモの規模も大きいのですが、ニュースでは、警察官と激しく衝突してケガ人が出ている映像もあり、ちょっと驚きました。

なお、フランス議会は、健康パスに関する法案を26日に正式に可決しました。


こうした抗議デモが起きる一方で、「外出禁止令よりはマシ」との受け止め方もあって、世論は大きく割れているようです。



<日本のワクチンパスポートの現状と課題>

日本でも、新型コロナウイルスのワクチン接種を公的に証明する「ワクチンパスポート」の申請受付が、7月26日から全国の市区町村で始まりましたね。


これは、海外の渡航先で入国時に証明書を提示すれば、検疫や隔離措置が免除・緩和されるというもので、日本政府は海外ビジネスの回復を期待しているといいますが、当初はイタリアをはじめ、五ヶ国(他はオーストリア、ブルガリア、ポーランド、トルコ)が対象と非常に限定的です。

例えば、イタリアでは入国後に課せられている10日間の隔離が、トルコでは入国時のPCR検査による陰性証明書の提出が免除されます。

また、韓国では隔離免除に必要な書類のうちの一つとして扱われ、エストニアでは入国後の隔離などはワクチン接種の有無にかかわらず不要としています。


また、共同通信の7月20日の報道によれば、現時点で30ヶ国以上の国で接種証明書が認められる見込みである一方で、ビジネス上の往来が多い米国と中国での交渉が難航しているとしています。


なお、外務省は7月30日付けで、渡航先として以下の七ヶ国・地域を追加しました。追加されたのは、ドイツ、セントクリストファー・ネビス、セントビンセント・グレナディーン、香港、ホンジュラス、リトアニア、プーケット島などタイの一部です。

今後は、日本の証明書が利用できると判断した国については随時、同省のホームページで公表するそうです。


ただ、上記の証明書で海外へ渡航して日本へ帰国した場合も、日本到着後の検査や隔離措置は免除されないという問題点があります。また、他国が発行しているワクチン証明書を持参して日本に入国する場合も、外国人であろうと日本人であろうと政府は隔離免除などの措置は取っていないのです。

本当に人の動きを活発にしたいのであれば、感染状況を見極めながら、証明書を相互に使えるように利便性を向上する必要があるのではないでしょうか。


政府は当面、紙媒体で証明書(下の写真は書式例)を発行し、いずれはスマートフォンなどで表示できるようデジタル化する方針だといっていますが、二次元コードの規格について国際的に策定中で、その動向を見定めながら検討していくということで、実際にはまだまだ時間がかかりそうです。

コロナウイルス ワクチン接種証明書の様式サンプル <厚生労働省HPより>

上の証明書で、右上方の少し空間があるところにQRコードが加えられる予定のようです。用紙自体には”偽造防止対策”が施されているとはいいますが、まったく証明書としてデジタル化がされていないのは一目瞭然です。


申請に必要なものは、以下の4点。

(1)申請書

(2)海外渡航時に有効なパスポート

(3)接種券のうち「予診のみ」部分

(4)接種済証又は接種記録書


申請先は、接種を受けた際のワクチンの接種券を発行した市町村(通常は住民票のある市町村)ですが、接種後に転居した場合など、1回目と2回目で別の市町村の接種券を使用して接種を受けた場合には、それぞれの市町村が申請先となるなど、この場合の手続きは煩雑です。


また、多くの自治体は窓口の混乱を避けるために申請は郵送のみでの受付としている所が多いため、実際に発行された接種証明書が返送されてくるまでに1-2週間程度のラグが発生するでしょう。


そして、接種券が届く前に先行接種した医療従事者や職域接種などのケースでは、<ワクチン接種記録システム(VRS)>に問い合わせる形で、市区町村の受付担当が情報の照会を行なった上で入力を行うのだそうです。

以前、日本のニュース報道で、接種後のVRSへの入力が、すべて自治体職員による一枚一枚の手作業だと知った時には、正直なところ、ここまでデジタル化が遅れている日本の行政の現状に驚愕しました💦



<日本からイタリアへの渡航は?>

以上のように、日本のワクチン接種証明書を取得すれば、イタリアに到着後の検疫と隔離は免除されます。ただし、イタリア入国前14日以内に英国に滞在したりトランジットしたりすると、現状ではPCR検査または抗原検査を受けて、5日間の隔離、そして、隔離期間の終わりに再度PCR検査または抗原検査を受ける必要があります。また、ブラジルやインドなどのように、事前に滞在・トランジットをした場合には、イタリアに入国できなくなるケースもありますので、渡航ルートの選定には注意が必要です。

ちなみに、日本~イタリア間は、現在アリタリア航空が、羽田~ローマ間を直行便(週5便)で繋いでいます。


しかし、現状で問題となるのは、入国後の隔離は免除されても、今回の<グリーンパスの義務化>によって、美術館やレストランに行くために、その都度PCR検査を受けないとならない点です。また、在住でない旅行者でも検査結果のデジタル認証を取得できるのかどうかも未確認です。

そのため、残念ながら実質上、観光目的での渡航は現実的でないと言えるでしょう。



<イタリアの感染状況の推移>

最後に、イタリアのその後の感染状況の推移についてもお伝えします。(この記事は執筆時7月30日現在の情報を基に書いています)


今回は、過去3週間の推移を1日の増加数の週ごとの平均値で見てみましょう。

1週間のトータル数ではなく、一日あたりの平均数となります。 


   * 7/ 9- 7/15 感染者数: 1,602 死者数: 16 回復者数: 1,668

   * 7/16- 7/22 感染者数: 3,439 死者数: 10 回復者数: 1,433

   * 7/23- 7/29 感染者数: 4,930 死者数: 16 回復者数: 1,541


ここ数日の英国3万人やフランス、スペイン2万人超えという感染状況と比べると、イタリアはまだ抑えられている方ではありますが、7月22日に2か月ぶりに5千人を超え、この2日間は6千人を超えるといった具合で、感染者は確実に増加傾向です。


最近のニュースで耳にしたのは、スペインのバルセロナでは先週末、夜間外出禁止措置を発令したそうです。

ヨーロッパ各国では、多くの人が移動する夏のバカンスシーズンが終わって、昨年のように、秋以降の感染の加速が懸念されています。



<まとめ>

日本では、東京をはじめ、連日のように過去最多の感染数を更新する地域があり、全国の感染者数も2日続けて1万人を超えてきました。緊急事態宣言も拡大や延長がされる中、国民への危機感の共有を求める政府と、”宣言慣れ”してしまって首相や知事の言葉が心に響かない様子の国民。。。その一方で、オリンピックでの連日のメダルラッシュに沸く報道とのバランスや兼ね合いが何とも奇妙に映ります。


不思議なのは、日本でのPCR検査数が、諸外国と比べて相変わらず非常に少ないことです。例えば、英国で5万人を超える感染者が出た頃の検査数は、1日100万件を超えていました。状況が落ち着いてきていたイタリアでも、平均して1日25万件は検査が行われています。


一方、報道やデータで見る限り、ここ数日の東京の検査数は平均して1万件前後、全国でも6万件前後だそうです。これだけ感染者が増加傾向にあるのに、一向に検査数を増やさない(増やせない)ということは、言葉を替えると、無症状の隠れ陽性者が把握できていないのが実態だということですよね。


結果的に無観客での開催にしたとはいっても、オリンピック開催によって、世界各地からの人の流入があっただけでなく、期間中の人流は毎日それなりにあるでしょう。

そして、政府や自治体がどんなに「自宅でオリンピックを観戦しよう!」と謳っても、危機感を感じていない国民は、”自粛疲れ”を晴らすために夏休みで帰省や旅行に出かけている様子です。


世界中で、コロナ関連の悪いニュースを見聞きすることなく、純粋にオリンピックで汗を流すアスリートたちの活躍が応援できたら、どんなに楽しいだろうと思わずにはいられない毎日です。



注:写真はすべてネットニュースより拝借しています。


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